2026.10.9
Cybersickness Abatement from Repeated Exposure to VR with Reduced Discomfort
Taylor A. Doty, Jonathan W. Kelly, Stephen B. Gilbert, and Michael C. Dorneich
IEEE Transactions on Visualization and Computer Graphics, 2024
サイバーシックネス(cybersickness)、すなわち仮想現実(VR)によって引き起こされる酔いは、VRを楽しむことや、その普及に悪影響を及ぼす。サイバーシックネスを軽減するために用いられてきた方法の一つに、VRへの反復曝露(repeated exposure)があり、本研究ではこれをCybersickness Abatement from Repeated Exposure(CARE:反復曝露によるサイバーシックネスの軽減)と呼ぶ。しかし、反復曝露中に強い酔いが生じると、一部のユーザーは再びVRを体験することをためらう可能性がある。視野(Field of View:FOV)の制限は、周辺視野における視覚的な動きを最小限に抑えることでサイバーシックネスを軽減するが、その一方でユーザーの視覚体験を損なうという欠点がある。本研究では、FOVを制限した状態で生じたCAREの効果が、その後FOVを制限しない通常のVR体験にも一般化するかを検討した。参加者は、最大20分間VRゲームをプレイした。反復曝露条件(Repeated Exposure Condition)の参加者は、4日間にわたって同じVRゲームをプレイし、最初の3日間はFOVを制限した状態で、4日目はFOVを制限せずにゲームを体験した。その結果、FOVを制限した1~3日目において、有意なCARE効果が認められた。さらに、FOV制限を行わなかった4日目のサイバーシックネスは、FOV制限なしのゲームを1日のみ体験した単回曝露条件(Single Exposure Condition)の参加者と比較して、有意に低かった。以上の結果から、サイバーシックネスを最小限に抑えた状態でも、有意なCARE効果を生じさせることが可能であることが示された。最後に、本研究の結果について、CAREを説明する複数の理論的枠組み、すなわち感覚再配列(sensory rearrangement)、適応(adaptation)、馴化(habituation)、姿勢制御(postural control)の観点から考察した。
(発表者:清原 大稀)
2026.10.16
Generalized channel separation algorithms for accurate camera-based multi-wavelength PTT and BP estimation
Gašper Slapničar, Wenjin Wang, Mitja Luštrek
Biomedical Optics Express, 2024
血圧の継続的なモニタリングは健康管理や疾患の早期発見において重要ですが、従来のカフを用いた測定方法では身体への接触や測定時の負担が課題となっています。本研究では、カメラを用いた非接触血圧推定の実現に向けて、異なる波長の光が皮膚内部に到達する深さの違いを利用し、脈波伝播時間(PTT)を推定する手法を提案しました。特に、カメラの各色チャネルに含まれる波長成分の重複に着目し、遺伝的アルゴリズムによって信号を分離する手法を開発しました。13名の被験者を対象に、安静時と運動後の手のひらを撮影し、得られたPTTなどの特徴量からランダムフォレストを用いて血圧を推定しました。その結果、1)提案した信号分離手法により、従来手法と比較して血圧推定精度が向上しました。2)個人校正を用いた被験者単位の交差検証では、最も高精度な手法において収縮期血圧3.48 mmHg、拡張期血圧2.61 mmHgの平均絶対誤差を達成しました。これらの結果は、カメラによる非接触の血圧推定において、波長成分の適切な分離が重要であることを示しており、将来的な非接触血圧モニタリング技術の発展に貢献するものです。
(発表者:板谷 優輝)
2026.10.16
Thermal comfort analysis of car drivers through physiological responses in different cabin environments
Pengpeng Xie, Guiguang Chen, Cong Shi, Jianbin Luo, Shibo Bin
Applied Ergonomics, 2026
快適な車内温度環境は、ドライバーの健康と安全にとって極めて重要です。定量的なガイドラインを確立するため、本研究では実車条件下における生理学的信号と主観的な熱的知覚との関連性を調査しました。我々は幅広い車内温度範囲において、多様な被験者グループから熱感覚および快適度評価(TSV/CSV)を収集すると同時に、5つの生理学的信号(手首温度、心電図、皮膚電気活動、筋電図、呼吸)を測定しました。分析の結果、2つの重要な知見が明らかになりました。1) 手首の温度および心拍変動(HRV)の特定の指標は、車内温度と主観的評価の両方と強い相関を示し、熱的快適性の生理学的根拠を明らかにしました。2) 実証的に熱中性温度を26.2 ◦Cと特定し、最適な快適ゾーンは23.4 ◦Cから28.3 ◦Cの範囲に及ぶことが判明しました。これらの結果は、自動車メーカーに対し乗員中心の空調設定値を定義し、生理学的フィードバックに基づいた将来の快適性評価システムを開発するための、データに基づく直接的な証拠を提供するものです。
(発表者:遠藤 響)
2026.10.23
Enhancing speech recall and reducing cognitive load through rhythmic amplitude modulated vibrotactile stimulation in noise
Jacqueline Urakami, Toshikazu Kanaoka, Akito Moriwaki
Scientific Reports, 2026
本研究では、雑音環境で聞いた音声内容の記憶を支援するため、音声のリズムと強弱に同期した振動触覚刺激「RAM-Vib」を提案した。直径8 mmのコイン型振動モーターに左手の人差し指を置き、日本語音声を聞く際に振動を提示することで、音声内容の再生と認知負荷への影響を3つの実験で検証した。実験1では音声の振幅包絡に基づく振動、実験2では日本語のモーラに対応するリズム振動を用いたが、再生成績の明確な改善は得られなかった。そこで実験3では、200 Hzの短い振動を毎秒8回提示し、音声の強弱に応じて振動強度を変化させた。22名の参加者は雑音下で短い物語を聞き、その内容を口頭で再生する課題を行った。音声のみ、音声と振動、音声と光の3条件を比較した結果、音声と振動の条件では、再生得点(平均±標準偏差)が32.23±7.48から34.86±7.38へ有意に向上した。発汗に関連する皮膚の電気反応も有意に低下し、生理的な負担が軽減した可能性が示された。一方、アンケートで評価した主観的な作業負荷や注意の困難さには、有意な差が認められなかった。本研究は、音声のリズムと強弱に同期した触覚刺激が、雑音環境での音声内容の再生を支援する可能性を示した。
(発表者:田中 零響)
2026.10.23
Light of Normals: Unified Feature Representation for Universal Photometric Stereo
Hong Li, Houyuan Chen, Chongjie Ye, Zhaoxi Chen, Bohan Li, Shaocong Xu, Xianda Guo, Xuhui Liu, Yikai Wang, Baochang Zhang, Satoshi Ikehata, Boxin Shi, Anyi Rao, and Hao Zhao
International Conference on Learning Representations (ICLR), 2026
フォトメトリックステレオ(Photometric Stereo:PS)は、カメラを固定し照明の向きだけを変えて撮影した複数枚の画像から、物体表面の各画素の向き(法線)を推定する手法であり、工業製品の外観検査や文化財の記録、CG制作などで表面の細かな凹凸を計測するために用いられている。従来のPSでは光源の向きを事前に測定する校正が必要であったが、近年、光源の条件を仮定せずに大量のCGデータから法線推定を学習するユニバーサルPS(Universal Photometric Stereo)が提案されている。しかし既存手法には、(1)ネットワークの内部で照明の情報と形状の情報が混ざったまま処理されること、(2)画像の縮小処理によって細かな凹凸の情報が失われること、という2つの課題が残されていた。本研究では、これらを解決するLINO UniPSを提案した。(1)に対しては、照明の情報を集約する専用のトークン(Light Register Tokens)を導入して学習時にCGの正解照明と照合させるとともに、全画像を同時に参照する注意機構を用いることで、照明と形状の情報を分離した。(2)に対しては、ウェーブレット変換により細かな成分を保持する特徴抽出と、法線が急激に変化する領域の誤差を重視する損失関数を導入した。さらに、Blenderで作成した10万シーンからなる学習データセットPS-Verseを構築した。その結果、実物体の定番ベンチマークであるDiLiGenTにおいて平均角度誤差4.65°(従来の最良5.01°)、細かな形状を多く含むLUCESにおいて9.43°(同11.21°)を達成し、既存手法を上回った。一方で、ほぼ平坦な物体の細かな凹凸に対しては、凹凸が反転して推定される場合があることも報告されている。これらの結果は、光源の校正なしに表面の細かな形状を計測できる可能性を示しており、実環境におけるPSの適用範囲の拡大に貢献するものである。
(発表者:鈴木 伯)
2026.11.6
Anti-Stress: A Wearable Device With Real-Time Breathing Feedback for Stress Relief
Jin-Wei Hou, Edward T.-H. Chu, and Chia-Rong Lee
IEEE Transactions on Affective Computing, Volume 16, Issue 3, 2025.
深呼吸によるストレス軽減効果を高めるため、呼吸パターンをリアルタイムでフィードバックするウェアラブルデバイス「Anti-Stress」を開発した。本デバイスは、マスクに取り付けた温度センサーで呼吸を検出し、耳クリップ型センサーで測定した心拍変動(HRV)からストレス関連指標を算出する。呼吸パターンの検出精度は平均99.1%、応答時間は平均182ミリ秒であった。60名を対象とした実験では、フィードバックを受けた群で、対照群と比較してストレス指数(SI)とHRV指標のRMSSDに有意差が認められた。また、ユーザビリティ評価でも良好な結果が得られ、神経症傾向や開放性が高い参加者ほど、ストレス軽減効果が高い傾向が示された。以上から、リアルタイムの呼吸フィードバックが、深呼吸訓練によるストレス軽減を支援する可能性が示された。
(発表者:横川 光希)
2026.11.6
Design and Evaluation of a 6-DoF Wearable Fingertip Device for Haptic Shape Rendering
Dapeng Chen, Da Yu, Yi Ding, Haojun Ni, Lifeng Zhu, Hong Zeng, Zhong Wei, Jia Liu, and Aiguo Song
IEEE Transactions on Visualization and Computer Graphics, Vol. 31, No. 10, pp. 8439–8451, 2025.
仮想物体の形状を触覚的に呈示するためには,多様な触覚情報を再現できる高自由度のデバイスが求められる.本研究では,6自由度のスチュワート型パラレルリンク機構を用いた指先装着型触覚デバイスを開発した.6個の小型サーボモータによって可動プレートの位置と姿勢を制御し,指腹への接触・非接触,滑り,皮膚の伸張などの触覚刺激を呈示する.デバイスの寸法は68 × 59 × 56 mm,質量は45.5 gである.機構の運動学的解析と出力性能の評価に加え,15名を対象とした3種類の知覚実験を実施した.その結果,曲率弁別閾(JND)は3.02 ± 0.23 m⁻¹となり,曲面形状の認識正答率は3自由度条件の53.4 ± 7.1%から6自由度条件の72.0 ± 5.9%に向上した.さらに,視覚情報がない条件でも,力覚提示装置を併用することで82.3 ± 8.2%の形状認識正答率を達成した.これらの結果から,提案デバイスの曲率知覚および形状呈示における有効性が示された.
(発表者:五十嵐 まい)
2026.11.20
2026.11.20
2026.11.27
2026.11.27